週刊おさむ誌

元マンガ編集者が細々と

森山中教習所/真造圭伍

友人が貸してくれて、読んでみたらこれが面白かった。

森山中教習所 (ビッグコミックス)

森山中教習所 (ビッグコミックス)


無気力というか、冷めた大学生の主人公(清高)とかつて高校の同級生であったヤクザ(轟木)が、田舎の非公認教習所にひと夏のあいだ通うミニマルなストーリーです。
読み進めていくと、なんだか静かな「邦画」を観ているような感覚に陥りました。
とても牧歌的でノスタルジーただよう、そんな雰囲気に包まれた物語です。
その起因となる大きな要素があの味のある絵だと思うのですが、なにより陰影や間の取り方や細かな所作の描き方が絶妙なんですね。
そこで人物の内面が読み取れたりしてなかなか読みがいがあります。


終盤は教習所で共に生活を送っていた登場人物たちはバラバラに別れてお互いの生活に戻るのですが、直接接触することはなくともお互いを気にかけ合っている関係のユルさが描かれています。
作者もあとがきで
“一生会えないけど大切な友人がいたりする”
と記しているように、この「緩い関係」
というのがこの作品の中で重要なテーマなのでしょう。

侵略!イカ娘 第3話

オチが無いだのと言われながらも主人公の可愛さで人気を得ている「イカ娘」の3話。

怖くなイカ?――チキンライフセーバーホタルイカ。芥川さん。
天敵じゃなイカ?――人間の手足は蛇足。シャチの極悪面。
新入りじゃなイカ?――渚「世界がおかしい」。これでいいじゃなイカ。

個人的に今回は一番面白かったです。特に怖くなイカ?が。テンポも良かったし。
栄子たち「幽霊怖い」  イカ娘「幽霊よりシャチとかサメのほうが怖いし」
こういう内容の口論をするシーンでイカ娘と栄子たちの間に墓石を割り込ませて認識の齟齬を強調してましたね。


3話は全体的に価値観のすれ違いがテーマとしてあるように思います。

  • 怖くなイカ?

幽霊を信じないイカ娘⇔幽霊信じる栄子たち (個人間レベルでのすれ違い)

  • 天敵じゃないか?

シャチの浮き輪を知らない(ので本物だと勘違いして水生生物として怖がる)イカ娘⇔知っている人間たち (種族間レベルのすれ違い)

  • 新入りじゃないか?

浜辺(海の家れもん)の外から来た渚⇔海辺にいる人間たち (世界観レベルのすれ違い)

特に新入りじゃないか?でのすれ違いは、イカ娘のいない世界からやってきた渚がイカ娘を怖がっていて、視聴者の現実に依拠した価値観からしてみれば至極まともな反応であるはずなのに、栄子と千鶴に変な子扱いされるという面白いものです。海の家にやってくる客もイカ娘のことを全く怖がりません。
これはドラえもんの世界の住人がドラえもんの存在を疑わないのと同じことです。のびたたちの前でドラえもんを怖がったらきっと変な奴だと思われるでしょう。
渚の言った「世界がおかしい」はついこの前まで自分のいた日常の世界と海の家れもんでの日常世界のズレからきた発言です。